からだ
通信
- 腰痛の多くは心配いりませんが、「安静時・夜間の痛み」が続くときは注意が必要です
- がん・感染・骨折・血管の病気が、腰痛の陰に隠れていることがあります
- 姿勢を変えても和らがない痛みや、高齢の方の急な腰痛は、早めにご相談ください
腰痛は、多くの方が一度は経験する身近な症状です。実際、腰痛は日本人の4人に1人が自覚しており、自覚症状の中で男性・女性ともに第1位となっています(第2位は男女とも肩こり。厚生労働省「令和4年 国民生活基礎調査」)。
その多くは、姿勢や筋肉の疲労などによるもので、過度な心配のいらない腰痛です。しかし中には、見逃してはいけない「危険な腰痛」が隠れていることがあります。今回は、日々腰痛を診てきた立場から、注意していただきたいサインについてお話しします。
見逃してはいけない「危険信号を伴う腰痛」
腰痛の中には、「危険信号(レッドフラグ)を伴う腰痛」と呼ばれるものがあります。代表的なものに、次の4つがあります。
① 悪性腫瘍(がん)
② 化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)
③ 椎体骨折(ついたいこっせつ)
④ 腹部大動脈解離(ふくぶだいどうみゃくかいり)

① 悪性腫瘍(がん)
背骨そのものから発生するものもありますが、多くは他の臓器のがんが背骨へ転移したものです。乳がん、肺がん、腎がん、前立腺がんなどからの転移がよく見られます。
② 化膿性脊椎炎
化膿性脊椎炎は、細菌が背骨や椎間板(ついかんばん)に感染して起こる病気です。かつては結核が多くみられましたが(近年、結核は再び増加傾向にあります)、現在は黄色ブドウ球菌などの細菌感染が大半です。虫歯や膀胱炎などから、血流に乗って感染することもあります。免疫が低下している方(免疫抑制剤を使用中、透析中、長期のステロイド使用、糖尿病など)は、特に注意が必要です。
この①と②に共通する特徴が、安静時痛(横になっても痛む)と夜間痛(夜、寝静まると痛む)です。
③ 椎体骨折
椎体骨折は、背骨の骨折です。いわゆる「圧迫骨折」のことです。特に、高齢の方の急な腰痛(ぎっくり腰)は、この椎体骨折の可能性が高く、注意が必要です。初期はレントゲンでは判別しづらいため、MRIでの確認が有用です。特に、起床時に腰の痛みが強い場合は、椎体骨折の可能性が高くなります。
「尻もちをついてから痛くなった」という場合は診断も比較的容易ですが、実際には、知らないうちに骨粗しょう症を発症していて、少し重いものを持った、いつもより少し歩きすぎた、といった軽い動作でも起こることがあります。
④ 腹部大動脈解離
胸部の痛みを伴うことも多く、安静にしても改善しない腰の激痛が特徴です。多くは救急車での対応となりますが、生命に関わる腰痛です。
姿勢を変えても痛みが引かない「尿管結石」
安静時に強くなる腰痛には、「尿管結石」もあります。通常の腰痛は、横向きに寝るなど、痛みが和らぐ姿勢があるものですが、尿管結石による痛みはどんな姿勢をとっても和らぎません。
実は私自身も経験者で、20年前、外来の診察を途中で止めざるを得なかったことがあります。座薬が有効なことが多い痛みです。
こんな腰痛は、早めにご相談ください
次のような腰痛は、自己判断せず、早めに整形外科を受診されることをおすすめします。
・横になっても痛む、夜寝ているときに痛む
・どんな姿勢をとっても痛みが和らがない
・高齢で、急に腰が痛くなった(特に起床時に強い)
・胸の痛みを伴う、激しい腰痛

当院の腰痛診療について
当院では、脊椎を専門とする医師が腰痛の診療にあたっています。また、当日撮影が可能なMRIを備えており、必要に応じてその場で検査を行うことができます。保存療法から手術療法まで、患者様の状態に合わせて対応いたしますので、気になる腰の症状があれば、どうぞご相談ください。
よくあるご質問
Q. 腰痛は、どのくらい続いたら受診すべきですか?
数日で軽くなる腰痛の多くは心配いりません。ただし、安静にしても痛む、夜間に痛む、姿勢を変えても和らがないといった場合は、続いた期間にかかわらず、早めの受診をおすすめします。
Q. レントゲンで異常なしと言われましたが、痛みが続きます。
椎体骨折の初期などは、レントゲンでは分かりにくいことがあります。MRIでの確認が有用な場合がありますので、痛みが続くようであればご相談ください。
Q. 高齢の家族が急に腰を痛がっています。様子を見ても大丈夫でしょうか。
高齢の方の急な腰痛は、骨折が隠れていることがあります。特に起床時に痛みが強い場合は、早めの受診をおすすめします。


